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監督との出逢いからすべてが変わった

Image by Olia Gozha

お前はチームを影から支える捕手になれ!

 

監督「捕手とはなんだ?」

監督に初めて話しかけられたのは、僕が2年生になった春の頃だった。

 

中学と高校ではあまりにレベルが違い、この監督の言葉に返す返答が見つからず、

ただ立ち尽くす自分に監督は黙って練習を見ていた。

緊張感が走る。。。

監督とはそんな出逢いだった。

 

この時から僕は、目上の方とのコミュニケーションを取る訓練やマナー、

当たり前のことは当たり前にやる癖、物事を奥深く掘り起こして理解することが

毎日の習慣となる。。

 

実際試合に出るよりも、監督とのコミュニケーションは重圧が半端ではなかった。

 

いくら試行錯誤していても答えは見つからず、間違った答えを持っていくのに対して

怒られるという「恐怖感」が潜在意識の中にあり、立ち止まる自分さえいた。

 

練習を毎日していく中で怒られることは当たり前だが、

その喝に耐えられず、僕はやがて腐り始めた。

 

「いちいちうるせえな。。」

性格に棘が出始める。

 

辛いこと、耐えねばならない状況のもと、僕は「逃げる」選択をしてしまったのだ。

 

「試合に出たくねぇ」

親に恩返しをすると決めたのに何をやっているんだ?

と自問自答するのに半年間続いた。

 

やがて夏の大会が近くなり、先輩方もピリピリする中、僕は大いに反省し、

練習に励み、寮では野球の勉強し、そんな毎日をこなしていく中で、

必死にチャンスを掴むべく努力をした。

 

ですが、「ミスしたら怒られる」ことは僕自身大きな壁であり、

反省しては、腐っての繰り返しが続いた。

自分たちの代になっても。。。。

 

挫折とはこういうことなのだろうか。。


この時の口癖が「だりぃー。」

力が抜ける一言を自分自身に無意識に言い聞かせていた。


そんなある日に、僕は監督へ一冊のノートを提出しに行った。

本能から、本当は「試合に出たい」と魂が叫んでいたからの行動であろう。

気づけば監督の前に立ち、一冊のノートを両手で手渡しする。

 

緊張感が高まる心臓に悪い瞬間だった。

提出したノートの内容は。


【本質と理解】

・投手、野手、メンバー、指揮官、全てを理解し、個々の長所を活かして、

今自分は何をすべきか。

・状態、環境、天候。そこからどう試合運びをするか。

・長所を活かすためには、どうするべきか。

 

捕手について勉強した一冊のノート。


ここからが、飛躍する瞬間となる。

 

ある日、僕は監督に呼び出され、1対1のミーティングを頂いた。

驚くことに、監督は涙を流したのだ。

 

【人の気持ちを理解し、謙虚で貪欲であるお前が何故、腐り始めたのか。

俺はお前を、必死になって勉強するお前を信じ続けていたんだぞ。

地道に努力するお前を一番に信じてずっと見ていたんだぞ。

この間俺に提出したノート。

あんなことを書いた捕手はお前が初めてで、俺はしっかりと評価していたんだぞ。】

 

評価されていたことに、涙を流した。

 

嬉しかった。

 

こんな言葉を授かるのは初めてだからだ。

 

そして言われる。

【園田!お前はチームを影から支える捕手になれ!】

 

期待、信頼、応援。。

体の芯からビリビリくる衝動に抑えきれず興奮した。

 

燃えさせるようなことを言いやがって!

と内心思い、熱が入り、圧倒的な吸収率と、何かが自分自身の中で

込み上げてくるものさえあった。

 

「野球が好き!」

 

この一番大切な感情を思い出させてくれたのが、紛れも無い監督だった。


人は幼い頃から好きでやり出したものを続けていく中で、 

辛さ、大きな壁にぶつかることからいつしかそれが

「楽しい」から「辛い」と思考や感情が変わる。

「つまんない」「辞めたい」。。。

本来は好き。すごく好き。

でもその純粋な感情は、心の奥深くに闇として閉じこめてしまう。

 

まさに監督はその闇に閉じこもった本来あるべき感情を呼び起こしてくれたのだ。


いつも応援してくれている親に対しての「感謝の気持ち」。

監督が本気の涙で向き合ってくれた、一番欲しかった他人からの「愛」

 

「感謝の気持ち」と「愛」。。

 

この2つが僕にとってかけがえのないものとなる。



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