「いつかこの景色一緒に観ようねっ‼︎」
僕はそう言ってイタリアのフィレンチェの街の風景をiPhoneのテレビ電話越しに、リアルタイムで日本にいる彼女に伝えていた。
かつてルネッサンス時代に栄えた花の都フィレンチェ市は石畳が続く、中世の街並みが今も残る歴史文化遺産指定都市。
まるで絵手紙の中にある世界のように風情漂う綺麗なアルノ川に沈む夕陽をどうしても彼女に見せたかった。
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2012年、当時僕は2年付き合った彼女を日本に残しジュエリーの勉強の為に単身でイタリアフィレンチェに留学に来ていた。
世界一繊細なジュエリーと言われるFirenze styleジュエリーを知った時は身体中に鳥肌が立つように感動した。
それからは1度イタリアに行ってそのジュエリーを作る技法を、学びたいという想いだけを頼りに、一心不乱に働きお金を貯めてようやくこの場に辿りつけたのだ。
一つ歳上の彼女は当時26歳だった僕が
「ジュエリー学びに留学に行きたい‼︎」
と相談した時、何もいや顔せずに
「うん、いいよ。少し寂しいけど行っておいで」
ってすぐ答えをくれた理解力ある彼女だ。
僕はいつも昔からそうだ。
◯◯がやりたい!どっか行きたい!と自己発信をするタイプで、足軽にすぐ行動を起こそうとしてしまう。
しかし、いつも彼女は何一つ嫌な顔をせず、「うん、いいよ」と答えてくれる性格であり、留学に行く事を言っても、
いつものように「うん、いいよ」っていう返事が帰ってくる事は、もう分かっていた。
僕はそんないつも応援してくれてる彼女にどうしてもこの景色が見せたくて、写真ではなくテレビ電話越しで伝えたかった。
iPhoneを片手に街を撮影しながらポンテベッキオという有名なジュエリー店が並ぶ橋を渡り、ドゥーモへ行ったりした。
iPhoneをスピーカーにして手に持ち街を歩き周り、日本語で大きな声で喋ってる日本人は、世界から集まる観光客からきっと変なやつだなーと思われただろう。
それほどどんな街に住んでるかという事を僕は彼女に伝えたかった。
「いいねー、いつか一緒に行ってみたいなぁー。美味しいパスタ食べたいな。ピザも食べたい!」
「うん、絶対一緒にいこうね!」
そんな何気ない約束をテレビ電話越しにしたのを今でも鮮明に覚えてる。
留学も終え日本に帰り、地元に岐阜にジュエリー工房を開いた。お店もなんとか軌道に乗り、彼女との付き合いも順調。
そして、彼女と付き合って3年くらいが立った夏。
僕は人生で初めて一大決心をした。
彼女が仕事のお盆休みを使い一緒にバンコクに旅行に行くときに
<プロポーズをしよう>という事を。
場所はバンコクでは、もうここしかないと思っていた。
世界一高いSkyBarと呼ばれる所だ。

バンコク旅行でたくさん楽しんで最終日前日に2人で少しフォーマルな格好をしてSkyBarに足を運んだ。
ネットの写真で見た通りの綺麗なBarだ。さらに運良くJAZZバンドのLiveも行ってるではないか。
ムードはバッチリ。
広大に広がるバンコクの夜景を見ながら地上247メートルの涼しいそよ風にあたりながら
自分で作ったダイヤモンドのエンゲージリングを日本からコッソリ渡す事にした。
僕はいつも「うん、いいよ」と言ってくれる彼女だから今回もすぐ良い返事が、彼女から聞けると自信があった。
普段真面目な顔して話すことなんてないから、緊張しながらも彼女にありのままの感情、お付き合いしてからの事、そしてこれからの2人の事。
そんな想いを語った後に、指輪を彼女に渡した。
しかし、すぐ返事はなかった。
彼女は下を向いてしまった。何か考えているのだろうか。いつもの即答ではない。
そのうち彼女は涙を流して、こう答えてくれた。
「ありがとう。これからも宜しくね。」
こうして僕たちは結婚する約束を交わした。
もうどんなけその時、幸せだったか言葉では表せれないくらいの喜びと幸せ感が心の奥底から生まれた。
それから僕らは順調に結婚の準備をクリアしていった。
彼女のご両親にはしっかりと手土産持ってご挨拶に行き、ご両家の顔合わせもしっかりとした和食料亭で行い、アパートを借り彼女との同棲もスタートさせた。
プロポーズしてから約1年後の結婚式向けて準備をしていった。
そこでハネムーンどこに行く??という話になり、僕は留学時代のあの経験を想い出した。
「やっと2人でイタリアに行けるね。イタリアで良い?」
彼女は笑顔でいつも通りに
「うん、いいよ」と答えてくれた。
そして僕らのハネムーン準備期間が始まったのだ。
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「なんだこの楽しそう写真たちは!!」
僕はFacebookを見ながら彼女にこう叫んでいた。
たまたまタイムラインに流れている写真はカップルがドレスとタキシードで、世界中で素敵な写真を撮りまくってる内容だった。
ボリビアの光に反射されたウユニ塩湖だったり、上海の街並み、ハワイの海沿い、メキシコの砂漠などなど、とてもユーモアのある写真から美しい自然溢れる写真まで。。
僕はすぐその2人の情報を調べた。分からない事はすぐGoogleで調べるのは僕の得意分野だ。
どうやら松永さんという男性らしく、彼女とデート感覚で写真撮りまくりにいってるらしい。
(なんて楽しそうなことを。。マ、マネしたい)
さらに調べると1ヶ月後に名古屋で写真展を行うとの事。
(行くしかない。そしてマネさせてもらおう。許可をとりにいこう)
僕は松永さんのバックパックウェディングの写真展に行く事にした
もちろん彼女にも聞いてみた。
「ハネムーンのついでにさ、何カ国か行ってさ、僕らもドレスとか来て色んな国で写真撮ろう!絶対面白そうやない??る」
もちろん彼女の答えは、即答で
「うん、いいよ。面白そうやね、やろやろ!」
といつも以上にノリノリで答えてくれた。