top of page

15/9/22

恩師との別れ…

Image by Olia Gozha

高校進学を控えた中学3年生の初春。学年末テストも終わり、英語暗唱大会も終わり、あと残されたことといえば…卒業式だった。

中高一貫に通っていたので、卒業したところで10日後にはまた同じメンバーと顔を合わせるので、特に変わることなんて無かった。

私たちの話題といえば…

教師達の入れ替わりの話だった。

やれ数学の〇〇先生が結婚で退職、だの〇〇先生が教頭先生になるらしい、だの。

その中で一番私が不安になった話は…

担任の先生の退職の噂だった。

自分をここまで支えてくれた先生が退職?それは考えたくないことだった。

だが、中学3年生。されど、中学3年生。オトナの事情、というものが何となく分かっていた。

担任の先生はほぼ定年に近い歳だった。きっと退職してゆっくりされるんだろう、そんなことを考えていた。

卒業式の日。明るく卒業式を終えた私たちは教室に集結し、最後のクラス会を開いた。

それまで泣くことが無かった担任の先生が…花束を抱えて声を震わせた。

「泣いたら…カッコ悪いもんな。」

そう言って顔を歪めて、無理やり先生は笑った。

「先生はこれから何をするんですか?」そんな質問が教室のどこからか聞こえた。

「先生は…夢を叶える為に、教師を辞めます。」

私は驚いた。冗談にも若いとは言えない先生が…夢を叶える為にまだまだ頑張る…?

でも誰1人それを否定も、笑うこともせず、その空気の温かさを感じた。

泣くのは…カッコ悪い…そう思い、私も先生の前で涙は堪えた。

いつか私も大人になった時。先生にどこかで会うことがあれば、先生に感謝の気持ちを述べたいと思った。

だからその時は…何も言わなかった。何故かわからないけど、何も言葉が浮かばなかった。

先生から貰ったものはあっても、私はまだ歩き出したばかりだったからだ。まだまだ道の途中。先生に感謝を述べるのは今じゃなくてもいいかな…そう思い、先生には笑顔で挨拶をした。

外に出ると…季節はもう春だった。

←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page