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15/8/11

子供を母性愛たっぷりで可愛がる人は天才で、どう扱っていいか分らない私は中途半端な母親だと思ってたけど、女神に会ってからちょっと変われた話。

Image by Olia Gozha

 子供を好きとか嫌いとか言う以前に、接点がなかったからどう扱っていいか解らない。


子供を母性愛たっぷりで可愛がる人は天才。

保育士さんや助産師さん、子供好きを仕事にする人は才能を磨きまくった秀才。

子供をどう扱っていいかわからない凡人以下の私は

彼女達に助けられたり、驚かされることがよくある。

本当に凄い。


そんな私が結婚して子供を産んだ。

頼れる親族はなし。

子供のいる友人もいない。


大丈夫、育児書もあるし、行政の相談窓口もあるし、ネットもある。

夫も協力的だ。リアルな世の中もネットの世界も、そう悪いもんじゃない。

自分に言い聞かせながら、赤子と向き合う日々。


妊娠がわかった時から

「大丈夫、なんとかなる、なんとかする」と、自分に言い聞かせていた。

うれしい、愛おしいという母性が芽生えるより先に

責任感がのしかかって来た私はちょっとずれている母親なのだろう。


初めての子が産まれた時

分娩台の上で手を繋ぎ、君が自立するまで100%味方になる、

できる限りの事をする約束をした。

他にもいろいろ考え、少し母性が芽生えた。


授乳する おむつ変える 風呂に入れる 話しかける 遊ぶ 寝かせる

掃除する 洗濯する 料理する

まとまった時間で眠れない 髪の毛が抜ける 体重が戻らない

繰り返す日々に、自分自身の欲望や願望が薄らいでいく。

何かの修行みたいだ。

少しづつ赤子と私の母性も育つ。


小さな母性と赤子を抱き、一緒に外出できる程度に成長した頃

沢山の人に声をかけてもらったり、車内で席を譲ってもらったりした。

そしてあることに気がついた。


私の小さな母性なんてふっとばすほど

慈愛に満ちた眼差しで赤子を「かわいい」と見入っている人がいる。社交辞令を超えて見入っている。

それは赤子抱いている母親以外の人

私みたいに赤子抱いてる母親は、自分の子が一番かわいいからちょっと違う。

子供、女子高生、若いパパ、昔子育てをしたことがある男女。

少し子育てから離れている人達だから他人の子にも

純粋に「かわいい」といえるのだろう。

なんて最初思っていたが、どうも違う。

社交辞令をのぞいて、

他人の子に「かわいい」と見入っている人達は

お腹のそこから湧き出てくる愛情の泉をもっているようだ。

暖かく甘い水を体幹で味わっているような表情をして

穏やかな幸福感を楽しんでいる。

家の赤子が特別可愛いわけじゃない、

「かわいい」と見入っている人達は

どんな赤ちゃんでも同じ様にしているのだろう。


「天才とか秀才超えて、赤子はかわいい、という真理に到達したんですか?」

と、聞いてみたくなる。

 赤子は自分が生き残るために、大人を引きつける可愛さを身につけている。

だから可愛いなんて説もあった。

赤ちゃんにはカワイイと思わせる能力がそなわっていた(参考リンク)

これも実感として理解できる。私も他人の子をかわいいと感じるから。


しかし、他人の子を「かわいい」と見入り、

穏やかな幸福感を体で味わっている人は

明らかに私以上に味わっている。

私が胸でときめいている位なら、彼らは腹のそこから沸いてくる

愛情の水を堪能している位違う。


どうしたらそうなれるんだろうか?

私に何かかけているんだろうか。

疲れているのかな。

赤子を育てるのは修行みたいだ。

もちろん、私なりに赤子をかわいいと感じている。

ただちょっと、実感が薄いだけ。


死ぬ間際、走馬灯のように幸せな光景が思い出されるという。

私は今、とても幸せな走馬灯の中にいるような感じ。

幸せだ。でも実感が薄いんだ。


授乳する おむつ変える 風呂に入れる 話しかける 遊ぶ 寝かせる

子供は育つ。笑う。小さな幸せ、満足感。

自分が世の中の流れから離れていく修行みたいな日々、

いつか回転する走馬灯を抜ける時、自分もブレイクスルーする時がくるのかな。


小さい事件が起きた。

生後一ヶ月、新生児訪問でかわいい保健師さんがうちに来た。

アンケートをとられ、それを元に話しをしていく。

子育ては私一人、夫は協力的、親族なし、友達なし、行政のサービスまだ利用なし。

親族なし、の部分を聞かれ、私も馬鹿正直に父親がアルコール依存症だったこと、母親は離婚していないことを言ってしまった。

それは、15年以上も前に終わった話だ。

かわいい保健師「子供にどう愛情を注いでいいか解らないとか、ありませんか?」

「かわいいと思ってますよ」

かわいい保健師「自分が愛されなかったから、子供に対してどうしていいか解らないとか。」

「うーん、終わったことですから。親の事はもういいかな、というのが本音です。子供、かわいいと思ってますよ(人より薄いかもしれないけど)」

親子関係の問題はあった。

地獄を見たければ、アルコール依存症者のいる家庭を見よ、とか

生きづらさを抱えているアダルトチルドレンなんて言葉を聞いたことがあるだろう。

私もそれなりに嫌な思いをした過去がある。

でもそれは、夫と出会う何年も前の話で

自分一人で戦い、相応に決着が付いている話。


ありきたりだけど、人は人、自分は自分

親は親、私は私 親が私を愛してくれなかったとしても

私が子供を愛せないにはならんでしょ。

薄いなりに愛情はある。

余計なお世話だ。

かわいい保健師「本当に?」

「本当に、もういいんですよ・・・。」

この日は終わったが、

かわいい保健師さんが仕事できる人で、

4ヶ月の集団検診の時、順番を待っていたら声をかけられ

私は集団から離れ別室で話をするよう指示された。

「いいです!用事があるから家に早く帰らなきゃいけないんです。」

ちょっとイライラした。

私にとって、自分なりに決着つけているものを

いまさら他人に話すなんて、夏場に放置された生ごみを素手で漁り、

家の中にぶちまけろと言われているようなもの。

不快でしかないし、何の意味もない。サポート必要なら自分からいく。


授乳する おむつ変える 風呂に入れる 話しかける 遊ぶ 寝かせる

子供は育つ。笑う。小さな幸せ、満足感。

ちゃんと修行して、自分も育ってますよ!


でもちょっと振り返る。

保健師さんとの会話でイラつくってことは、図星だからじゃないか・・・?

うーん、いや、やっぱり過去愛されなかったとかどうでもいい。

親より大切な夫がいるから、愛情に飢えている訳じゃない。

子供に対する愛情が足りない?

他の母親達ほどハイテンションに見えないだけで、

私としては充分浮かれていると思っている。


過去の事はいいんだ。未来を考えよう。

私はどんな母、人間になりたい?

心に浮かんだのは、通りすがりの人

子供、女子高生、若いパパ、昔子育てをしたことがある男女

当たり前のように、妊婦と子連れに席を譲り、他人に親切にできて、

腹のそこから喜びの水を湧き出させ、赤ちゃんかわいいと言える人

心の声「自分にまともな母親、祖母がいたら自然とそんな人になれていたのかな?」

心の声「愛情とか喜びって、親から習って知るものだっけ?」

そんな疑問を繰り返し、修行の日々は過ぎる。

赤子は寝返り打てるようになった。

ふと、鏡をみる。

下向いて子供の世話ばかりしてるから、ほうれい線が濃くなった。

抱っこを繰り返した服は、袖と胸と腹の部分が擦り切れていた。


ブレイクスルーしたいな。

子持ち主婦で起業!留学!美魔女!は、

自分のやりたいことじゃない。

内向的ブレイクスルーがいい。

腹のそこにある水脈を掘り当てて、

愛情と喜びの水を湧き出させてみたい。


自然、人、生物、道具、物、お米の一粒

全てに宿っているという八百万の神様。

何か欠けている私を見守っていてください。


そんなことを祈っていると、

ある日、女神に会った。


毎日、散歩をしながら赤子の頭の匂いをかぐ。いいにおい。

抱っこしていると胸に穏やかな幸福感がわいてくる。

大丈夫、私はちゃんと母親だ。

数キロほど歩いて、帰りは電車を使うことにした。

上野駅で乗ろう。


京成上野駅の構内で、女神がエレベーターの前に立っていた。

彼女の後姿だけで、何故女神だと思ったのかは解らない。

でも、たまにいるんだ、通りすがりの人のなかに隠れている神様。


女神の傍らに小学生の男の子一人、ベビーカーの上には荷物が沢山載っていて

女神は片手でハンドルを握り、片手で小さな子供を抱き上げていた。

色あせたトレーナーにジーンズ 白髪が少し

後ろから近づきながら、彼女をみる。

間違いない、女神だ。確信した。

何故ここに? 少しの疑問とはやる気持ちを抑え

エレベーター前に進み、彼女の脇に立った。

女神の化粧気がない顔、小さめのめがね

トレーナーの腹の部分、たわんだ所が擦り切れてるのを見た瞬間

自分の腹のそこから愛情と喜びの水が湧き上がった。


「かわいいですね。いくつですか?」

女神「2歳です。」

小学生の男の子が微笑んだ。抱かれている子もにっこりした。

エレベーターの中で他愛のない会話をしながら、

自分の中にある愛情の水脈に辿り着いた喜びと、湧き出てくる幸福感を味わっていた。


女神の美しさは圧倒的だった。

母とか妻とか女とか、役名をつけるのがおこがましいほど

幸福な、

身近に存在する女神だった。


 擦り切れた服は、赤子が泣いた時、愛おしい時、求められた時何度も抱き上げた証明だよ。

習わなくても体が動く、自然な行為。

そのたびに幸せを感じていたじゃない。あなたもおなじでしょ、私もそう


そんな女神の声が聞こえた気がして、エレベーターを降りて子供達にバイバイしたあとも

しばらく余韻に浸っていた。


女神に会ってから、自分の中の何かが変わった。


私の中にも愛情の泉がある。腹のそこから実感がある。

やっと心から言える。

子供を産んでよかった。赤ちゃんかわいい。

私は幸せ。





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