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賢者はひっそりと生きる

Image by Olia Gozha

Bene qui latuit ,bene vixit

ラテン語「賢者はひっそりと生きる」


小さいころから、自分の感情をさらけ出すのは良いことだと習って来ました。授業中に手を積極的に上げ、意見をはっきりしっかり述べ、相手が間違っていると思えばはっきり主張する。Noといえる日本人になれと。


18歳ではじめて海外で生活した時の息苦しさは、そんな「相手を打ち負かすまで自分の主張を押し通すことが優秀」という空気だったかもしれません。日本では随分と「外国でもやっていける風」な私だったのにいざ海外では居心地が悪い自分を恥じていました。


会社に勤めてからも、「あなたのやりたいことは何?」「会議中に一言も発言できない社員は役立たず」というようなプレッシャーのおかげで、どんな会議でも最もらしく発言出来るようになり、おまけに相手のちょっとした矛盾を突いて、論破するというようなことも訓練されました。


小手先のコミュニケーション能力が上がって、仕事も一通り覚え、色々な出来事があって、10数年ぶりに海外生活を始めた時に愕然としました。


久々の海外(しかも学生生活)でコテンパにやられました。自分はいかに無知で、自分の言葉なんか世界に通用しないと思い知らされる毎日。自分から逃げ出したくなる日々。


ただ自分を褒めてあげられるとしたら、逃げる代わりに、自分の意見や主張を話すのをやめて、「流す」ことを選んだからでしょうか。出来る限りエゴを捨てて協調することに徹しました。「好かれよう」という下心も、正論をぶって「評価されよう」と思うのもエゴだとその時にわかりました。


なんでもっと頑張ってる私を評価してくれないの?という気持ちもエゴ。自分を痛めつけて、「私ってこんなに頑張ってる、誰も認めてくれないけど」とナルシズムに陥るのもエゴ。


とにかく認められようと焦ることをやめようと思いました。そしてなるべく卑屈にならず、聞くに徹して、意見を述べないことにしました。感情的になりそうな時は、そこに引きずられず、深呼吸して、出来れば一晩以上はそのことを考えないようにするテクニックもその時覚えました。


毎日がオペラのように喜怒哀楽激しく、ステージのスポットライトを浴びようと劇場型の人生を過ごす生き方は嫌だと。おとなしく脇役もしくは裏方にもくもくと徹し、主張しゅないことで軽蔑されたり、バカにされたと感じる出来事があっても、めくじらを立てず、穏やかに、静かに過ごす凪のような人生を送りたいと本気で思いました。


人生の目標は「がっかりする能力を失う」こと

他人に期待しなくなると、みるみる楽になりました。一見がっかりするような出来事があっても、実はそこには必然性があって、意味があるのだということもわかってきました。

突然のキャンセル、仕事がポシャる、友達を待ちぼうけ、お金を落とす、こちらは悪意ないのに誤解され嫌煙される、飛行機に乗り遅れる、病気になる、などなど。一見ネガティブにも思えるこれらの出来事も自然浄化作用とすら思えるようになりました。

最近は少しずつ、自分の話に耳を傾けて下さる方ができてきました。もちろん私にではなく、私のお役目に対してなのですが。

興味を持って下さる方が増えて来たことはありがたいことです。だからこそ何かお話する時は、お役目に徹して、本来のからっぽの自分を忘れないよう、注意深く喋るようにしなくてはと思います。

人の注目を浴び続けたり、嫉妬や人々の感情がうずまいている社会に対して矢面に立つといのは強靭な精神力を必要とする(もしくはものすごく鈍感のどちらか)ことです。揚げ足をとる人も多いし、自分の意見と違うということを「間違っている」と責める人も多い世の中です。

何か意志があってそういうお役目を全うしている世の中で有名な方々、オピニオンリーダーといわれる方々を尊敬します。賢者はひっそりと生きる、だからこそその言葉は世の支えとなるのでしょう。





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