私の人生は、良くしよう良くしようと足掻けば足掻くほどに、悪くなっていった。ここで一度、振り返り総括するならば、そうとしか言えない。
けれども、私はその空回りの足掻きを、そのときそのときの、やれるだけの努力を誇る。存分に実力を出し切ったのならば、実力不足が厭にはなるし、泣きもするし悔やみもする。けれど、その時必死で考えうる限りのベストは尽くしたのだ。それを今、兎や角いうのは、やはり、野暮なのだと思う。
そう考えると、少し希望が湧いてくる。がむしゃらで、体当たりでも、誰に馬鹿にされようと、私は自分の気持ちに忠実で、それに向かって一生懸命で、その結果として今があるのだ、と考えれば、悔いはない。
少なくとも、ここまでは。
勿論、悪いことが、それで帳消しになるわけじゃあない。いいこともあった、なんて言ってみたって、それは人生に於いて、ほんの少し。僅かの時間だ。だからこそ尊くて、光り輝く。完璧に幸せだった、なんて言える時間を与えてくれた人達には、最大限の感謝を贈ろうと思う。
新見真理様へ
まりちゃんは、私が幸せだった時に一緒に過ごしてくれました。どんなに努力して今までのくそったれの場所を脱出したって、まりちゃんがいなかったら、私は楽しい高校生活ってやつを送れなかったと思う。いてくれてありがとう。友達でいてくれてありがとう。こういうの残すの微妙な気もするけど、何もないのも、私は自分がやられた時さみしかったからさ。そうすると残したくなる性分なんだ。まあ、でも、さらっと流してほしい。あなたが半年ぶんめちゃくちゃな幸せをくれたぶん、それと、友達でいてくれたぶん、幸運を祈っています。ばいばーい。
吉田のばかへ
団長やなんかの責任者への連絡先はわからないし、くろいのはもしかしたら責任を感じて何するかわからないので、いちばん私のことどうでもよさそうなあなたへ託します。厄介な役目をごめん。
実のことを言えば、そんなに人生を振り返ったら、ここの経験はとびきり幸せとは言い難いです。迷惑かけて辛いし、そればっかり言いたくもねー。わかんないところでこうやって死んじまうこともあるんだよコンチキショウ肝に銘じとけよ知っとけよ!これだけは言っておきたかった、気取りやがって。本当に辛かったんだからな。
でも、迷惑かけてばっかりで、期待に応えられなかったのも、やりたくて仕方のない合唱なのに、その情熱に水を指す真似をして、いっそやらなきゃよかった、嫌な思いを、不快な思いをさせた、そのことに関しては、ずっとずっと謝罪したかった。私がその立場だったらやはり嫌だったと思う。それは仕方のないことだし、気を遣っても潰されてたと思います。ああ、何が言いたいんだろう。
わかってほしかったけど、ずっと謝りたかった。こういうわけで、こうなりました。最後までご迷惑をおかけしました。
甘えてしまった方々……
特に、不本意だし、切ったり出なかったり処理してたからそうでもないかと思うけど、ばか吉田。
…なんでバカって言ってるのかはわかるよね?そういう根性なしやめてよね。ねえ。もう、あんなことしちゃだめだよ。断れなかったのもばかだけど、やっぱりかなしいよ。好きな子だけにやる!やったらはっきりする!ねえ、思ってる以上に、相手ってそういうこと許さないしさ、気持ちにつけ込んでるんだったら、アンタ最低だわ。のっちゃったのもそりゃわるいけどさ、気持ち知ってて、それってさ、なお悪いよ。ばか。もう、友達でもいたくない。
なんだろう、もうさ、ここの友達って、きみだけだったんだよ。揺さぶらないでほしかった。好きになりたくなんかなかった。断れなかったよ。きらいになんか、なれないよ。
もうさ。きみは、世渡り、そんなうまくないのもしってるよ。しつこいと思ってるんならしつこいだけでもいい。答えだけ言って。答えわかんないからもやる。
ああ、吉田。お前は、いい男になんか、なれやしないよ。女を弄ぶにしたって、やり方ってのがある。70になったって、いいふうに熟成しやしない。断言する。
あたしがここまで言うのは二度目だね。けど、女友達と、男友達の両方と、もし会う機会が、ここであれば、あんたは思い知るだろうよ。そうして、あんたが、どれだけ根性なしで、どれだけいい男だったかってことを。何故燻ってたのか。きっと疑問に思うだろうね。みんなそういう目で見るに違いない。あたしは分かってるんだ。皆とは深い付き合いだもの。
きみみたいにウェイ系で頑張れはしなかった。そういうふうなの、羨ましかったよ。頑張り屋なのも、それで獲得したのも。私は、高校生活の部分こそ努力で獲得したけど、それはウルトラCだと思う。やり直すにせよ大博打だった。普通の学校に行ければいい、っていう小さな望みだったけど、それであんなに楽しめたのは、運が大いにあった。努力で勝ち取ったっていうなら、やはり大学生活やサークル活動に分があると思う。そっちのほうが博打のない、純粋の努力と忍耐の結果で、安全牌だもの。私は、そういう安全な道を歩めなかった。故に、訳の分からない捻くれた大学生活を着地点にしてしまった。私は、大学も青春だと思うし、きっと吉田もそう思ってるだろうし、そんなに実のところ人間関係どうこう、って、思ってないんだと思うんだ。羨ましいよ、いつも新しいことやってるエネルギーやら社交性。そういう前進的なとこ。もっと元気な時に会いたかったな。
これってラブレターってやつかな。はずかしいなあ。私、こういうの書くのって、はじめてだよ。メッセージカードみたいに短いお礼の文なんかじゃなくてね。あーあ、できれば、吉田以外のひとにあげたかった。ちゃんと応えてくれるひとに。泣けてくるよ。書きながら泣いてるけど。なんできみみたいなひとに、いろんな初めてをやらなくちゃあならなかったんだろう。悔しくて仕方がない。おかげで、悔しいけど、恨むことも出来そうにありません。おかしいよね。
ただ、はっきりさせてよね、次からは。変に気を持たせないこと。きみ、自分で思ってる以上に、いい男なの。手ぇ出したらそうでもないって空気をもっと出しなさい。さもなきゃ、本命の、すきな女の話をしながら抱け。童貞臭全開で抱かれるこっちの身にもなってよね。たく。
こうなったの、半分あんたのせいだよ。真面目な話。辛かった。物凄く。メンヘラとかじゃあなくってさあ。本当に、辛かったよ。懲りてよ。本当にいい男になるのなら、この位、乗り越えて、人生のスパイスにしてみなさい。軽いもんだよ、私如き。いつかはどうせ、私は死んでた。それが遅いか早いか、それだけのこと。おばあちゃんになってから死んでたら、あんたはわかんなかっただろうけどさ。それでも、私は何がしかの形で伝えていたのに変わりはないよ。私、めんどうくさいもんね!けど、もう気持ちは今更言わないよ。わかってるでしょ。わからなかったら、取り憑いてやる。前言撤回だ。ちゃんと返事できるようになるまでは、はっきりさせられるようになるまでは、あんたを見守ってやるからね。
みんなによろしく、いい感じに伝えといてね。長くなっちゃったけど。
上にいったら、私は完璧な状態であなたも、みんなも迎えます。待ってます。そうしたら、また、一緒に歌って下さい。