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15/2/18

世界一周の途中で親友になったカンボジア人を日本に連れて来ちゃった話 11

Image by Olia Gozha

ビザ取得


レアのパスポートは、なんとか18歳の申請で作れる事になった。


航空券も、一ヶ月後出発予定で購入済み。


後は、レアの日本行きのビザだけだ。


最初は反対していたレアのお父さんも、レアの説得により、日本行きを応援してくれるようになった。



よし!準備が着々と整って来てる!


レアの夢を叶えてあげられる!!


ユミ「パスポートも出来たし、後は日本に入って良いよ、っていう許可をもらうビザを取るだけだよ!」

レア「そうなんだ!大丈夫かな…?日本に行ける人は限られてるみたいだけど?」

ユミ「きっと私がついてるから、大丈夫だと思う!ビザ取りに行こう!」



私達は、日本に行く手続きのため、ほぼ毎週プノンペンに通っていた。


2人で格安バスに乗り、途中で鳥飯を食べて、さとうきびジュースとプリングルスを買い、4時間のバスの旅を楽しんでいた。


外には赤土が、コンクリートで埋められることなくありのままでどこまでも続いていた。



窓からは水田が見え、水牛と牛飼いの少年が歩いていたり、ヤギや鶏が放し飼いにされていたり、カンボジアのおじさん達が上半身裸で木陰で休んだりしていた。


こんな田園風景が昔の日本にも広がっていたのだろうかと、タイムスリップした気分を味わいながら、のんびりバス旅に浸っていた。


ビザも、未成年を連れて行く事になることだけが不安だったが、まあ何とかなるだろうと斜に構えていた。



いざ、日本大使館へ


来た。


ついにビザ申請まで来た!


親友になったカンボジア人を日本に連れて行くんです!って、日本大使館の人に言ったら、喜んでくれるかな・・・!


大使館職員「日本とカンボジアの観光大使だ!」


なんて言われちゃったりして。


大使館職員「友情の架け橋だ!」


なんて、褒められちゃうかも!



と、当日はかなりワクワクしながら日本大使館へ向かった。


が!


この期待は見事に裏切られ、粉々に砕け散ったのだった。


ユミ「すみません、友達の日本行きのビザ申請に来たのですが。」

大使館職員「カンボジア人の友達を日本に・・・ね。では、あなたが招聘人ということで宜しいですか?」


外国人を日本に呼ぶとき、特にビザの申請が難しいような途上国出身の人は、日本人が保証人のような形になり、色々書類を提出しなければならない。


そして、日本滞在中もその外国人が不法滞在や犯罪を犯さないように見守る、という決まりがあるらしい。


その役割を、招聘人(しょうへいにん)と呼ぶ。


ユミ「はい。私が招聘人です。」

大使館職員「わかりました。では、お話をお聞きしたいので、こちらへどうぞ。」


職員がそう言って私を個室へ連れて行った。


職員は日本人で、不機嫌な40代くらいのおじさんだった。


大使館職員「では、なぜお友達を日本に連れて行きたいのですか?」

ユミ「えっと・・・私が困った時にすごく親切にしてくれて、私もカンボジアでたくさん学ぶことがあったので、彼女に恩返しも兼ねて日本に招待したいと思ったんです。」

大使館職員「そうですか。(無表情)」



あれ?そうですか、、、って。

全然反応薄くない?



確かに、レアと知り合った時から日本に連れて行こう!という経緯について全て話すのは長すぎるし、口下手なのもあるが、久しぶりに改まった日本語を話そうとすると、しばらく話していなかったためかなりぎこちない説明になってしまった。


大使館職員「どうやってお知り合いになったのですか?」

ユミ「バーで知り合ったんです。知っていたバーをお手伝いすることになって。そこで、仲良くなったんです。」

大使館職員「バー?そんなところで知り合った人を日本に連れて行く?ましてや未成年を!大丈夫なんですか?」


と、職員は嘲笑いながら言った。



あれ?


バカにされてる??



大使館職員「バーで知り合った友達?そんな関係、友達と呼べるんですか?だいたい、あなたもカンボジアで何してるんですか?」


今思えば、この職員の質問は全うだったと思う。


ただ、この時は彼の態度と人格を否定するような、まるで既に犯罪を犯しているかのような咎めながらの質問の仕方に、ものすごく腹が立った。


ユミ「バーで知り合っても友達になれます。私が辛い時や病気になった時に、すごく親切にしてくれたんです。カンボジアには一人旅で来ました。この友達のおかげで、日本では到底出来ない貴重な経験をすることが出来たんです!」


私は必死に説明した。

ここまで来て、レアを日本に連れて行けなかったら、と思うと心が張り裂けそうだった。


大使館職員「はい、わかりました。ではパスポートを見せて下さい。」



バックから取り出し、パスポートを職員に手渡した。


大使館職員「…ちょっと待って下さい、あなた、、、ビザ切れてますよ!」

ユミ「え!!」

大使館職員「不法滞在だ!人のビザより自分のビザの心配をしたらどうですか。まぁこのままだと国外追放でカンボジアには帰って来れないかもしれませんがね。」

ユミ「!!!!」


まさか!!!


私が、不法滞在!?


だってビザにはちゃんと三ヶ月の記載が…



陸路でカンボジアに入ると、三ヶ月の間一ヶ月なら居ても良い、という記載の仕方になるらしく、三ヶ月分のビザだと勘違いするバックパッカーがたくさんいるという事実を後に知った。


大使館職員「観光局に行く事ですね。まずはその問題を片付けて来て下さい。まぁ、戻って来れるかわかりませんが。」

ユミ「くそ〜・・・ムカつくけど何も言えん。」


大使館職員にバカにした態度で言われ腹が立ったのと、まさかの不法滞在でカンボジア追放になるかもしれない不安で、目の前が真っ暗になった。



レアと一旦日本大使館を出たが、建物から出ながら、個室で何があったかレアに話してると、涙が溢れてきて、止まらなくなってしまった。




友達が日本に行きたい。


それを叶えたい。


ただ、それだけの事なのに。


なんであんな風に言われなきゃならないの?



悲しくて、悔しくて、どうすることも出来ない自分に無性に腹が立った。



レアは優しくなだめてくれたが、そこで起きた全ての事と、やっぱり自分は何も出来ないんじゃないかという無力さに愕然とするしかなった。


こうして、レアの初めてのビザ取得はことごとく惨敗に終わった。



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