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15/2/7

伝わらない訴えを繰り返す人たち

Image by Olia Gozha

たまにだが、精神障害・精神病を持った、あるいは、そうであろうと思われる方と仕事上会う。 


彼らの中には,精神病による幻覚・幻聴などによるためか,常識的に考えて通常あり得ないと思われる話をする人がいる。


例えば,「隣人から24時間常になぜか監視されている」とか,「電磁波が見える、常に私を攻撃してくる」といったものである。時節柄,電磁波が放射能に変わる時があるかもしれない。





昔の私のイメージは,そういう方々は話の内容も展開も支離滅裂で,周囲にはどうにも話の筋自体が理解できないのだろう,というものだった。


でも,そうではないんだ,と実感した。




彼らの多くは話の根幹,内容の中心自体は確かに常識外のものではあるが,話の筋立てなり意識なりはしっかりしており,むしろ詳細で綿密なものだ。


何より彼らは総じて熱心で真剣である。

話の内容は何度も何度も推敲を繰り返してきたものだろう。


何とかわかってもらいたい,協力してもらいたいという一心で話をしてくる。


私は彼らと会話していると,何となく「Xファイル」のモルダウを想起する。


何を言っても理解されず,宿命的に孤立化していくような人たち。





彼らの多くは一見とてもまともで,理知的であるともいえる。


ただ多いのは,考えを突き詰めすぎる傾向があり,自分の考えに信頼を置きすぎているところだ。


説明する力はあるけど,説得する力は弱い。


悪く言えば,自分の考えに疑問を挟み込むことをせず,一方的な主張しかしない。



彼らは多くの組織を回り,もう何年も何人も何度も同じ話をし,そして同じく無下に帰され,時には笑われ,怒られ,否定され続けている。

そして、その全てを彼らは覚えている。


でも,彼らにはやはり何かが見えるし,聞こえるし,感じるのだ。


周囲が信じてくれないこともわかってるけれど,それはとてもリアルで,疑いの余地がないと思える。


彼らの苦しみは終わらない。


ひどくなれば強制的に精神病院に送られるだろう。





私は電磁波は感じないが,彼らの言動は自分に似ているところがあるし,そういう気持ちはわかるところがある。 


自分だけと考えている言葉、自分だけと感じているおもい。

それが、いつか伝わるのではないか、そう信じている彼らの苦しみに向き合っている。

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