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煙草を吸う人と私についての雑感

Image by Olia Gozha

数年に一回、煙草を吸う。その度に「私にはとてもできない」と思って、揉み消して終る。どうも髪に匂いが染み付くのが厭、というより正確に言えば「厄介」なのだ。どう処理したものかわからないし、それを放置することの居心地は、親しめの他人の移り香よりなお悪い。

なぜ、それなのに煙草を吸うのか、というと、格好つけたいよりか、好きな人の気持ちに近付きたい、ということがある。大概そういう、煙草を吸う人との恋というものは実った試しはない。生涯で二人好きになったが、駄目そうなので、止めておいた。何も煙草如何に関わらず、私の専門ではない、といったところ、であろうか…負け戦も煙草も好みではなかった。つまりそういうことだ。けれど、それ自体を否定するものではない。私は酒を嗜むし、それを「止めろ」と、一切合切アルコールを摂らない人間に言われては、やはり腹も立つ。それを考えると、個人の嗜好に口を出すべきではない、そう思うのだ。つくづく。


高校生時分の男友達に、煙草を吸う人の多いのに私は驚いて、あるとき理由を尋ねてみたことがある。回答は一様にこうであった。

「ストレスだなあ…」と。

納得せざるを得なかった。過去に一波乱ある人間の少なくない、またはそういった人間を受け入れる度量のある生徒の多い高校だったから。

どうして驚いたか、というと、煙草、というのは、不良のイメージが大きかったのだ。中学生くらいで吸っていて、苛めの主導者になる、それこそ暴走族にもなろうという連中、そういう連中と如何にして早く関係を持つか、というのが、ジョックスのようなスクールカーストさながらのことだったから。

これが横浜市で、横浜駅の近隣で行われていたのだから始末に負えない。

そんな世紀末が常だったのだから、東京のど真ん中の、転校生やなんやかやを受け入れてはいるものの、通信制やフリースクールの体を為していない、ましてや普通科の高校に転校するのは怖かった。(転校理由は世紀末ではなかったにせよ)

だから仰天したのは確かだ。


そうして、高校から大学、ずっと東京にいて思うこと。喫煙者は多い。むしろ、高校を出てからは、「格好つけ」という理由ですぱすぱやる連中が増えた。学歴なんかは、関係なしに。すぱすぱ。すぱすぱ。お説教しながらすぱすぱ。たのしく酒を酌み交わしながら、すぱすぱ。

べつに構わない。煙草臭くなったって、それでも、そういう人間個人の行く先や、趣味が一致していたのならば、私は喜んで付き合うし、そんなことは厭わない。止めてくれとは言わないし、それよりも、その人間と一緒にいる楽しい時間を私は選択しているのだ。

これは、私は一度、人間関係全員を大切に、重んじよう、優しくしようとし過ぎて、それもあって重圧に押し潰された結果、いっそ全部関係を捨ててしまって学んだことでもある。

要らないのなら、我慢して無理をして合わせる方が、いっそ失礼だ。潰れて無責任に放り出す結末を迎えるくらいならば。気持ちのよい距離感で付き合っていた頃の方が楽だった。

そう。煙草は構わない。厭ならば、その間は会わない。話せば分かるし、大体、私の交友関係に於いては、話さないでいる奴輩も大勢だ。けれど、私もそうなので、余程信頼のある友人の場合「今は都合が悪いな」「この間は会えないということだな」と察しがつく。実際、忘れた頃に連絡が取れた場合、そういうものだ、と、何とはなしに確認しあう。ないし、私が求めるのと同じぶんだけ、向こうも熱烈に話してくるので苦笑してしまう。勿論私に余裕がなければ、仲が良くても出られない場合だってある。ひとえにそれは信頼ゆえだ。

そういう友達だけを残した。まだ削ることもある。また増やして、ということもあるし、改めて話して、有り難みを感じることもある。人は成長するし、流動的だ。


閑話休題。

だが、じゃあ、お酒がいけない、と、矛先を変えるのはよしてくれ。それだけはよしてくれ、とだけは思うのである。説得力、ゼロである。




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