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14/12/9

「ある7月の晴れたさわやかな日のできごと。」⑤

Image by Olia Gozha

さゆりの脳裏に電気が走った。

それとともに心臓の音が高まる。

私はこの感覚を覚えている。

冷たい感覚。

砂時計のラスト数秒、残りの砂がサッと落ちるように血液が下に流れる。

 

 

私の手が彼女の手から、離れる。





私ははっきり覚えている。

何かを訴えるような目。でもそこに何かはない。

彼女は幼すぎた。

その後に起こるであろうことを彼女は知らない。

彼女の目は私をしっかりと見据えていた。

私の顔が恐怖と緊張の入り交じった表情に変化するに従って彼女は迫る未来を理解したようだった。


その後のことはよく覚えていない。彼女は泣き声と私自身の内から助けを呼ぶ声が周囲に響き渡っていたはずだ。

彼女は背中に傷を負った。

その傷は今も彼女の背中に刻まれている。



自転車が左に傾く。

「わっ」

何とかさゆりは持ち直しバランスを保った。

家についた時、母はまだ帰っていなかった。

いつもならこの時間は洗濯をしているか、リビングでテレビを見ている。

暑がりな母はクーラーをがんがんに動かせて、昼下がりのサスペンスを見るのが常なのだ。

今日は、洗濯機の音もテレビから聞こえる役者の声も聞こえてこない。

まあ、母がいないからといって不都合なことはない。

あえて挙げるとすれば麦茶を持ってきてもらえないことくらいだ。

「シャワー浴びよう。」

靴を脱ぐとすぐさま浴槽に向かった。

いつものように洗濯機の上にある棚に手を伸ばす。

「あれ、今日は洗ってないのかな。」

いつもはタオルがそこには畳んで置かれていた。


【⑥に続く】

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