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小さな幸せ、大きな幸せ

Image by Olia Gozha

鬱、を患っていた私は、当初、兎角よくなる為の方法論を取り入れようと躍起になっていた。

一日の内に起こった、三つの小さな幸せを、寝る前に捻出する。というのがそのひとつであった。ポジティブに捉える、というやつだ。私は律儀に実行した。三つ挙げる度に、涙が出た。

細かな幸せなんか、ちっとも役に立ちはしなかった。それは、日々の苦痛に目を向けず、向かい合うこともしない。置き去りにして、余計もやもやしてしまう、そういう、目線そらしの下らない煙幕でしかなかった。優先順位が、断然下だったのだから。この場合は、むしろ、押さえつけるのは得策ではなかったのではないか。私は思う。俯瞰的、客観的に見て、性格上これはおかしいな、というのもあるし、実感が得られなければ不味かろう、という実体験上のこともある。どかんと大きな、それこそ中途半端な幸せを無視してしまうことから、私の病状は上向いてきたように思う。


だれか、助けて。

私は思った。けれど、そういうのはメンヘラなので、そう「外界に言ってしまったら」最早取り替えしが付かない。私一人で、やらなきゃいけないのだ。

「収入あるんでしょう」「稼げてんだろ?お前」

これが一番キツい。昼夜逆転してしまったらクビになるかどうか分からん仕事だ。稼げている=無理している、と言ってもいい。休み所がわからない。いや、よしんば休んだならば、それが乱れになるかもしれない。怖い。やるなら全力でやるしかない。「稼げてるんだろ?遊ぼうぜ」友達は言う。職場の人は、何を遠慮してるんだ、行っておいで、という。私は『どちらも本音だと断じることが出来ない』。友達は、大して重要ではないのに私を誘っているだけかも。けれどもこうして、嫌な言い方をすると「こまめにメンテナンス」をしなければ、友達はいなくなるのでは?それは辛いところ。そうして只淡々と上の「行っていいよ」はやはり建前、という癖がつく。どんどん根暗になっていく。或いは上司に連れて行ってもらった先で面白ので、申し訳なくて堪らなくて、本当にもうどうしたらいいのかわからない。どっちを尊重すべきなのか。天秤にかけられない。障害者ナントカで、手当をもらったとしても、私はその前はこうやって生きて来た。けれど、それ


ああ、大して、そんなのは、幸せでも、なんでもない!

むしろ、どうしてこんなのが、私に与えられなかったのか。与えられるようになる為に、どうやって私が頑張ってきたか、辛い思いをしたか。そうして、誰一人、それをわかっていないか。わかってもらおうと思うとする私の、なんと傲慢なことか…

その頃の私は、正確に言えば「精神的な」病名、が下されている訳でもない…いや、鬱傾向はないにせよ、少なくとも「睡眠障害」を押していた。その頃、私は恋人と同棲生活を送っていた。結婚をも、双方誓い合った仲だった。私が大学3年、そろ論文と就活を始めるころである。彼は理系で、就活時期やなんやかやは、私とは違ったのだ、と思っていいのかどうか、未だに私はわからない。私がただ悪いのだ、と、そのまま思って生きていくので構わないとも思っている。それは過ちで、最善を尽くして尚、私には理解し得ぬことだったのだから。けれども、そうして、そんな自分へのコンプレックスが、非常に重たくのしかかっていた。


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