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うわばみのぼやき

Image by Olia Gozha

登場人物

僕 自称ウワバミ。 人の悩みとか聞いて何でもかんでも飲み込もうとする博愛主義者。 カノジョなし。 職業はサービス業。


シマムラさん 「僕」のお客さん。 大体1ヶ月に1-2回お店に来る常連さん。


シンディ シンディと名乗りたいだけの飲み仲間。 「僕」とは寝るけど、お互いに恋愛感情皆無。


たなかさん シマムラさんと同じ職場の可愛い感じの人。 でもシマムラさんが大嫌いらしく、シマムラさんを知ってる「僕」に愚痴りたくなるらしい。 「僕」から見たら、偽善者。


敬太「僕」の親友。 「僕」とは違って取捨選択ができるタイプの人間。 いろいろ事情があってのバツイチだが、元嫁を誰よりも愛してる。


チャム 無茶しないで長生きして欲しいと願いを込めて里親募集サイトから引き取った「僕」のペットの猫


10月2日

ウチの店は、カランカラン、なんて昔の喫茶店みたいなベルの音がして来客を告げる。

今日は朝から変な天気で、10月なのになんか雲がどよんとしてて、気分がのってこない。


ちょっと肌寒くなりかけだからこそ、この季節が好きな僕は、携帯を片手に飼い猫のチャムのフードを計量カップですくって、チャム用のお皿に入れた。


とととと・・・と軽い足音とカチャカチャと首輪についた迷子札の音が狭いリビングにして、ほどなく足にチャムが甘えてる感触を感じる。

それもほんの一瞬で、彼は朝ごはんに向かっていった。


「チャムおはよう。今日はシマムラさんの予約があるから帰り遅いよ」


僕が声をかけても、チャムはご飯用のお皿にチャームをカチャカチャぶつけて、一心不乱にご飯を食べている。


クチャクチャというチャムの食事の音を聞きながら、僕もトースターにパンをセットして、冷蔵庫からオレンジジュースを出してコップに注ぐ。


携帯には、新しい予約のお知らせもないし、誰かから夕飯の誘いがあるわけでもない。


ふと、シンディと会いたい気分になってメールしてみようかなと思ったけど、メールの文面を考えることがひどく億劫に感じて、携帯をおいて、オレンジジュースのパックを冷蔵庫に戻した。

洗面所でうがいをして顔を水でさっと洗ってキッチンに戻ると携帯の画面にシンディからLINEが来てた。

-今夜、暇?

-暇。キモい

-ヒドっ。なんでよ?

-今夜誘おうと思ってたけどどうしよっかなって思ってたから

-じゃあ完璧なタイミングじゃない。キモいはないでしょ〜。

-だって、なんかタイミング合いすぎでキモかったんだもん。

-はいはい。ごめんね。何時あがり?

-20時予定

-21時に、クローバーね

-了解 、ありがとう

-ありがとうとか、キモっ(笑)


シンディは本名はたしか真弓とかそんな名前なんだけど、シンディローパーが好きだからシンディって呼べっていう僕より確かいくつかお姉さんの人。

2週に1回くらい会ってセックスする相手だ。

性格もすごく好きだしこの関係ももう2、3年続いてるけど、2時間くらいお酒飲んでそのまま帰ることもあるし、恋人というより親友の敬太に近い相手だ。


リビングに戻るとトースターからとっくにパンは飛び出していて、チャムものんびりクッションに寄りかかってお座りしてる。

少し冷めかけのトーストにテーブルの上に置いてある蜂蜜を落としてかぶりつく。


「うわ、ハチミツにオレンジジュース?甘いの好きね」


初めて、僕のウチに泊まった時、シンディは大げさに驚いて見せたっけ。

その後結局シンディをハチミツでベタベタにして楽しんだけど、意外に後片付けが大変で、あの後一回もそういう遊びをしてないな。


パラパラとこぼれ落ちたパンクズを足元にすっかり落としてお掃除ロボットのスイッチを入れたらシャワーにむかう。


僕の1日が始まった。


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