プロローグ -ド派手陰キャラ時代-
小さいころの記憶
ただただ、寂しかった。
私の目をまっすぐ見てくれる人がいなかった。
その反面、人の目を見ることができなかった。
両親にとっての最上の愛情だった「あなたの好きにしていいよ」が見放されているようで怖かった。
誰からも期待されていない気がした。
小学校に入って一週間、私のランドセルがピンクじゃなくて赤だったから、仲間はずれにされた。
「古臭い」「おばさん」「あんたには似合うわよ、ダサいから。」
「どうせならもっと似合うようにしてあげる」と、ドロ水をぶっかけられたこともある。
笑い飛ばす知恵がなかった私は、泣いた。みんなのまえで、ひざを抱えて。
そこからが凄まじかった。
「ババァ」「バカ」「ウザい」「ダサい」から始まり、上履きを捨てられる、体操着を破かれる。
お気に入りの白いワンピースを着ていったら、「ババアの癖に生意気」と、ウサギの糞と銀杏を椅子におかれた。(結果は言うまでもなく・・・)
だったらババアをやめればいい、と思った私は、三年で髪を染め、ピアスをあけ、化粧をした。
翌日、無敵になった気分で登校した。わくわくしながら引き戸を引いた瞬間、指を指して笑われた。
「あーあ、若作りしちゃって」と。
あ、もう無理だ。そう思った。その瞬間、私は陰キャラを脱するのを諦めた。
第一章 -お受験と新体操とチアダンス-
そんなド派手陰キャラの私は、踊るのが大好きだった。幼稚園で始めた新体操とチアダンスは、貴重な趣味だった。生まれ付いて体が硬かった私も、毎晩のストレッチのおかげで相当やわらかくなった。
年三回の新体操の発表と、不定期のチアのパフォーマンスでは、誰の目も気にせず、思いっきり笑い、思いっきり踊った。私の所属していた新体操クラブは、タイトルなどには出場しなかった。だからこそ、順位を気にしないで思いっきり踊れたのかもしれない。チアにしたって、サッカークラブの試合についていって踊ったりするだけで、大会などには出場しなかった。いろんな学年がいて、みんな仲がよくて、すごく楽しくて、幸せだった。ここにいれば、私は怖くない、とさえ思った。さらに、好きこそものの上手なれ、というだけあって、三年の秋の新体操の発表では個人発表もしたし、チアでも飛び技に抜擢された。もう怖いものなしに思えた私だが、ひとつだけ、迷いがあった。
私の小学校は、学区内に大きな公立中学校があり、中学受験をしなければほぼ必然的にそこに進学することになっていた。つまり、小学校と同じ面子ともう三年間過ごさないといけないということ。完全に陰キャラが定着した私にとって、それはマジでリアル生き地獄だ。おまけに、校則はシャレにならんくらい厳しい。なんだかんだ嫌がらせのネタになっていた茶髪だって、本当は大事なのだ。黒染めするなんてとんでもない!要は前述のいろいろとシャレにならない状況を回避するには中学受験するしか道がない!ということ。さあ困った。新体操もチアもやめたくない。けど、塾にいかないと三年間リアル生き地獄。禿げそうなくらい悩んですっきりしなかった冬のある日の新体操。いつもの通り開脚をしたとき、右の太ももに、ん?と何か引っかかった感じがした。とその瞬間、ぷちっと痛みが爆発した。
シャレにならん位痛い。診断結果は肉離れ。いたってポピュラーでシンプルで分かりやすい診断書とゴツいサポーター的なのと松葉杖を一対もらって返されたのだが、まあいいとこ全治一ヶ月。一ヵ月後、改めて開脚をして絶望するのだ。ひ、開かない・・・。
さあどうする。これまたはげそうなくらい悩んだ。
マイナスからもう一回チアと新体操をはじめて三年間リアル生き地獄を生きぬくか、すっぱり諦めてお受験モードか。親には相談しなかった。三日三晩白髪になりそうなほど悩んで最終的に、中学受験を取った。そして、誓った。
ダンス部がある学校に入る
そうと決まれば入塾テスト。三年の二月に、受験票にはんこだけ押してもらってイノシシのように張り切って参戦したのが、わが意外なる才能を発見するきっかけとなる。
受付のおねーさんの営業用スマイルとともに返された紙の、全国平均値が☆、自分の結果が棒グラフなグラフを見てみると、あまりの極端さ開いた口が塞がらない。
まず、国語。棒グラフはペチャンコに潰れてしまって、全国平均☆がはるか遠い。あちゃー。
お次は算数。全国平均☆は真ん中くらい、棒グラフはまあまあ8割。oh,私算数得意だったのねw
next,社会。平均☆にはまだまだたどり着いてないけど、ぺしゃんこではない。うん、よしとする。
最後、理科。なんと、わが棒グラフはびよーんと引き伸ばされて☆を見下ろしているではないか。
極端、、、。国語と理科の先生の顔がぽかーんしてたのが印象的。
必要書類を貰って走って家に帰り、はんこを貰って郵送&無事入塾。
塾に入って一ヶ月、理科の先生にお呼び出しを食らった。
めんどくせーと思いつつ、応じる。
先生「さて。志望校決めようか。」
アタシ「うん。」
先生「ここ、(格式高いおjoさま学校)どう?」
アタシ「やだ。」
先生「ダンス部あるぞ?」
アタシ「社交ダンスって書いてある。」
先生「じゃあいきたいところ調べてこい。」
アタシ「うん。」
というような短い会話の後、私は古本屋で生まれて初めて女子中高一貫校入試ガイド的なものを手に取った。目をとじてぱっと指差したところを検討していくという方式で一番最初にあたったのが、今のわたしの学校だ。校則、よし。制服、よし。部活、よし。おっけーここにしよう。と、私の志望校は決まったのだ。