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<第二回>どうなるかわからない人生の話。

Image by Olia Gozha

萩を出る前日。


あたしの母が、ちらし寿司と鯛のお吸い物を作ってくれた。


「なにかリクエストは無いか?」って言うので

この二つをリクエストしてみた。


誕生日には毎年、

母はちらし寿司とお吸い物を作ってくれる。


それがすごくあたしには嬉しいものなんだ。

「他に無いか?」と聞くので

苺大福をリクエストしてみた。


母は覚えていたようだ。

今まで一回しか作って貰った事は無いけど

幼い時に手作りで牛皮から作ってくれたあの苺大福が

忘れられない。


それだけ美味しかったし

印象に強く残っていて

またいつか母の苺大福を食べたいなーなんて

密かに思っていたりして。


あの時、苺大福というものが出初めだったらしく

なんとなく作ってみる気になって

作ったそうだ。


ヘーと思ったけど

牛皮作りに悪戦苦闘していた姿を

覚えている。


そういう懐かしさに触れながら

夜にちらし寿司とお吸い物を頂いた。


そして、今日

新幹線で東京へ向かうにあたって

ちらし寿司を少し残しておいてくれて

おにぎりを作ってくれていた。


ちらし寿司のおにぎりを2個と

海苔のおにぎりを2個。


ポールスミスの紙袋に入れて

渡してくれた。

母なんかポールスミスなんて知らないはずなのに

こんなシャレた袋を

どこで手に入れたのだろう。


新幹線で食べようかと思ったけど

おなかがすかなかった。


食べたら無くなってしまう・・・。

本当はそちらの気持ちの方が

強かったのかもしれない。


いろいろと用事を終えて

ビジネスホテルを取った。


小心者で友達に「泊めてくれ」の一言が

言えなかったから・・・。


プライド?なのかな。

ただの遠慮なのかな。

そこはよく自分でもわからないけど

今晩は一人でいたいなと思ったりもしたのも本心。


そこの部屋で

ポールスミスの紙袋をようやく開けた。


ちらし寿司のおにぎりを1個頂いた。

本当に美味しかった。

暑いからって気を使って保冷剤まで

入れてくれていた。


なんかしみじみしちゃって

残りの3個は冷蔵庫へしまう。


冷えると固くなってしまうことは

わかりきっているけど

また明日もこのおにぎりを食べたいという

気持ちがそうさせた。


東京の夜はにぎやかだ。


となりの部屋には

なにやら海外の方がいるらしい。


聞き慣れない言葉が

漏れる様に聞こえてくる。


あー。

今更愛されている事を知る。


いや、わかっていたよ。

ありがたいと思っていたよ。


でも、本当にあたしは

素直ではないのかもしれない。


今、明日、その先が見えないせいか

心細さはある。


でも、どうにか立っていないと

倒れてしまってはすべての意味がなくなる。


我慢できない涙が漏れる。

我慢強さには自信があるが、

ちょっと今夜はセンチメンタル。


こういう自分に久しぶりに

出会った気がする。


大事な人がいない

さみしさや辛さや不安。


こういう時に分かるから

本当にあたしってバカだなって思う。


母に父に兄弟に・・・

親友に友達に仲間に・・・

大事な人に・・・



今夜はひとり素直になってみよう。



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Image by Jukka Aalho

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